「最近、男子ゴルフは人気ない」「男子ゴルフはオワコンだ」といった声を耳にし、その理由が気になっていませんか。
かつてのゴルフブームは終了したとも言われ、ゴルフ離れが止まらない中、男子ゴルフは危機と衰退に直面しているという指摘もあります。
プロゴルファー男子の人気はなぜ低迷し、一方で女子ゴルフが人気な理由は何なのでしょうか。
この記事では、男子ゴルフが不人気とされる理由を多角的に分析し、その深刻な課題と今後の展望について詳しく解説します。
この記事のポイント
- 男子ゴルフが人気ないと言われる具体的な理由
- 女子ツアーとの人気の差が生まれた背景
- 男子ツアーが抱える構造的な問題点
- 今後の男子ゴルフ復活に向けた課題
浮き彫りになる男子ゴルフ不人気の理由

- なぜ男子ゴルフは人気ないと言われるのか
- 男子ゴルフはオワコンという声も
- ゴルフ離れ止まらずゴルフブーム終了か
- 男子ゴルフの危機、その衰退の背景
- プロゴルファー男子の人気が低迷する現状
- スター選手の不在とエンタメ性の欠如
なぜ男子ゴルフは人気ないと言われるのか

国内男子ゴルフツアーの人気が著しく低迷している現状は、複数の客観的なデータからも明らかになっています。
特に主要な指標である「年間試合数」「会場のギャラリー数」「テレビ視聴率」の全てにおいて、活況を呈する女子ツアーとは対照的な状況です。
まず試合数ですが、日本ゴルフツアー機構(JGTO)が発表した2024年のツアースケジュールは24試合となっており、これは1973年にツアー制度が施行されて以来、最も少ない試合数です。
一方で女子ツアーは年間37試合が開催されており、その差は14試合にも及びます。
試合という最高の舞台が少なければ、選手がメディアやファンの前に姿を見せる機会も自然と減少し、継続的な関心を維持することが極めて困難になります。
次に、トーナメント会場へ実際に足を運ぶギャラリー数を見ても、その差は深刻さを増しています。
例えば、地理的に近いコースで同年に開催された男女のトーナメントを比較すると、女子ツアーのギャラリー数が男子ツアーの実に3倍から4倍に達するケースも報告されています。
ファンがプロの迫力あるプレーを間近で体感し、会場全体の熱気を共有する機会が少ないことも、人気低迷に拍車をかけている要因と言えるでしょう。
一目でわかる男女ツアーの人気の差
以下は、国内男女ツアーの主な指標を比較した表です。数値は年度や個別の大会によって変動しますが、全体的な人気の傾向を明確に示しています。
指標 | 国内男子ツアー | 国内女子ツアー |
---|---|---|
年間試合数(目安) | 約23~25試合 | 約37~39試合 |
ギャラリー数(1大会あたり) | 女子の1/3~1/4程度 | 男子の3~4倍程度 |
テレビ視聴率(国内大会) | 平均3~6%台 | 平均5~8%台(注目大会では10%超えも) |
さらに、メディアでの注目度を測るテレビ視聴率においても、女子ツアーが圧倒的に優勢です。
女子ツアーは若手選手の台頭や実力の拮抗により、賞金女王争いが最終戦までもつれ込むといったドラマチックな展開が多く、これが高い視聴率につながっています。
対照的に、男子ツアーの国内大会における視聴率は伸び悩んでおり、メディアでの露出度の差が、そのまま人気の格差として固定化してしまっている状況です。
男子ゴルフはオワコンという声も

「男子ゴルフはオワコン(終わったコンテンツ)」という、極めて厳しい声がファンの間で聞かれる背景には、長年にわたる魅力の低下と、将来への期待感を削いでしまう複数の要因が存在します。
特に、半世紀以上の輝かしい歴史を持つトーナメントの突然の中止や、ファンが感情移入しにくい断続的な開催スケジュールは、関心が離れる大きな原因となっています。
その象徴的な出来事が、1971年から続いてきた伝統ある「マイナビABC選手権」が2024年シーズンから開催中止となったことです。
このニュースは、多くの熱心なゴルフファンに大きな衝撃と失望を与えました。
歴史と伝統を誇る大会ですら姿を消すという現実は、スポンサー企業にとって男子ゴルフトーナメントを支援するメリットが著しく低下していることの証左であり、ツアー全体の魅力そのものが揺らいでいることを示唆しています。
また、現在の男子ツアーの日程は、数週間にわたって試合が全くない空白期間が生まれる、いわゆる「虫食い状態」となっています。
「ツアー」と名乗りながらも、シーズンを通しての連続性がなく試合が途切れてしまうため、ファンは継続的に熱狂することができません。
一貫した物語性がなければ、個々の選手の動向を追いかけ、応援する熱心なファン層が育ちにくいのは当然の実情です。
「先週のあの選手の調子はどうかな?」「来週はどこのコースで誰が優勝争いをするんだろう?」といった、ファンが抱くごく自然なワクワク感がシーズン中に何度も途切れてしまうのは、非常につらいですよね。
これでは、毎週のように熱戦が繰り広げられる他のプロスポーツに興味が移ってしまうのも、無理はないかもしれません。
このように、権威ある大会の消滅や不規則なトーナメント日程は、ファンに「もう以前のような盛り上がりは期待できないのかもしれない」という諦めに似た印象を与え、「オワコン」という辛辣な言葉で語られる大きな一因となっているのです。
ゴルフ離れ止まらずゴルフブーム終了か

男子ツアーが抱える個別の問題だけでなく、ゴルフ業界全体が直面している構造的な課題も、人気低迷に深刻な影響を及ぼしています。
特に、未来のゴルフ界を支えるはずの若者を中心としたゴルフ離れと、長年ゴルフ人口の中核を占めてきた団塊世代の引退、いわゆる「2025年問題」が、業界の将来に暗い影を落としています。
ワイム総合企画株式会社が平成生まれの男女を対象に実施した「平成生まれのゴルフに対する意識」に関する調査では、およそ7割がゴルフ未経験であるという衝撃的な結果が報告されました。
ゴルフを始めない理由の上位には、以下のような、若者にとっての「壁」とも言える項目が並びました。(出典:PR TIMES ワイム総合企画株式会社の調査)
若者がゴルフを始められない主な理由
- 費用が高い(プレー代、練習代、道具代など)
- 一緒に回る友人・知人がいない(仲間探しのハードル)
- 道具を揃えるのが大変(初期投資の大きさ)
- ルールが難しい(覚えることの多さ)
- 練習できる環境がない(都市部での場所不足)
このように、現代の若者にとってゴルフは「お金と時間がかかる」「一緒に楽しむ仲間を見つけにくい」といった、気軽に始めるにはハードルの高いスポーツと認識されています。
かつてビジネスの潤滑油とも言われた接待ゴルフの文化も薄れ、若者がゴルフに触れるきっかけ自体が社会的に減少しているのです。
さらに、これまでゴルフ人口を力強く支えてきた団塊の世代が2025年以降、全員が75歳以上の後期高齢者となります。
この世代が体力的な問題や運転免許の返納などを機にゴルフから一斉に引退することで、ゴルフ場の利用者数が激減するのではないかと深刻に懸念されています。
事実、ゴルフ場の数は年々減少を続けており、業界全体が縮小傾向にあることは否定できません。
これらの理由から、一時的なゴルフブームは完全に終了し、ゴルフ人口そのものが減少していく中で、男子ツアーが新たなファンを獲得するのは極めて困難な状況にあると言えるでしょう。
男子ゴルフの危機、その衰退の背景

男子ツアーの衰退は、単なる人気低迷という表面的な現象だけでなく、その運営母体である日本ゴルフツアー機構(JGTO)が長年抱えてきた、根深い構造的な問題に起因しています。
時代の変化やグローバル化の波に柔軟に対応する改革を怠ってきたことが、今日の危機的な状況を招いていると言っても過言ではありません。
最も深刻な課題は、トーナメントの根幹を支えるスポンサー離れに歯止めがかからないことです。
企業のマーケティング手法や広告戦略が多様化した現代において、多額の費用がかかる男子ゴルフトーナメントへの投資効果が見えにくくなっています。
この厳しい現実は、PGAが主催する日本最古のプロトーナメントであり、最も権威ある大会の一つである「日本プロゴルフ選手権」でさえ、長年にわたり冠スポンサーが見つからないという異常事態からも明らかです。
また、JGTOはトーナメントの「主管」という立場に過ぎず、開催コースの選定や放映権、コースセッティングなどに対して強い権限を持っていないことも、改革を阻む大きな一因とされています。
結果として、米PGAツアーなどに比べてコースセッティングのレベルが低い、悪天候を理由に安易に競技が短縮される、といった問題が頻発し、ファンに「世界最高峰の真剣勝負の場」としての魅力を感じさせにくくしています。
グローバル基準からの致命的な遅れ
近年、男子ツアーは世界のゴルフ界のグローバル化の波に完全に乗り遅れ、選手の強さを測る世界ランキングの付与ポイントが著しく下落しました。
これにより、世界を目指す有望な若手選手ほど、より多くのポイントを獲得できる海外ツアーに活躍の場を求めるようになり、結果として国内ツアーの空洞化が進むという、深刻な悪循環に陥っています。
言ってしまえば、「抜本的な対策を打ち出す権限がない」から「現状維持に甘んじる」という状態が長く続いた結果、ファンとスポンサーの双方から見放されつつあるのが現在の姿です。
JGTOには、組織のあり方そのものを見直す、大ナタを振るうような強力なリーダーシップと改革が今まさに求められています。
プロゴルファー男子の人気が低迷する現状

現在の男子ゴルフ界には、世界のトップレベルで活躍を続ける松山英樹選手や、アマチュア時代から人気を牽引してきた石川遼選手という、紛れもない二大スターが存在します。
しかし、一般のゴルフファンや、ゴルフを日常的に観戦しない層への知名度は、悲しいほどにこの二人に極端に集中してしまっているのが実情です。
週刊ゴルフダイジェストが毎年実施している「プロゴルファー総選挙」の近年の結果を見ると、松山英樹選手と石川遼選手への得票が全体の3分の1以上を占めるという「二強状態」が続いています。
これは、二人の人気が絶大であることの証明であると同時に、裏を返せば、彼らに続く次世代のスター選手が育っていない、あるいは世間に全く認知されていないことの深刻な表れです。
賞金ランキングで上位に入る実力者でさえ、ゴルフを熱心に見ていない層にとっては「誰それ?」という状況が長年続いているのです。
もちろん、元アマチュア世界ランキング1位の中島啓太選手や、規格外の飛距離を誇る蝉川泰果選手、欧州ツアーで日本人最年少優勝を果たした久常涼選手など、将来を嘱望される才能豊かな若手は次々と登場しています。
しかし、彼らがゴルフ界という枠を超えて、誰もが知るお茶の間のヒーローになるまでには至っていません。
その象徴的な出来事として、多くの人気アスリートが出演する年始のテレビ特番「とんねるずのスポーツ王は俺だ!!」のゴルフ対決に、2024年は男子プロが一人も出演しませんでした。
これは、テレビメディアが「視聴率を持っている(世間的な注目度が高い)」と判断するスター選手が、残念ながら松山・石川両選手以外にいないと見なされていることの、一つの証左と言えるかもしれません。
多くの人は石川遼と松山英樹しか知らないというこの状況を打破し、ファンがそれぞれのスタイルや人柄に惹かれ、応援したくなるような多様な個性を持つ選手が次々と現れ、メディアで適切に取り上げられるようにならない限り、人気低迷からの根本的な脱却は難しいでしょう。
↓本文中の活躍選手に関する記事はこちらをご参照ください↓


スター選手の不在とエンタメ性の欠如

男子ツアーの人気を語る上で、避けては通れないのが、青木功・尾崎将司・中嶋常幸の3選手がゴルフ界の頂点でしのぎを削った、伝説の「AON時代」との比較です。
彼らには、世界レベルの強さだけでなく、観る者の心を鷲掴みにする圧倒的なカリスマ性がありました。
彼らがトーナメント会場にいるだけで空気が一変するような、他の選手とは一線を画す独特の存在感を放っていたのです。
その後、石川遼選手が彗星のごとく現れ、そのプレーと爽やかなキャラクターで社会現象ともいえる「ハニカミ王子」ブームを巻き起こしました。
しかし、現在の男子ツアーには、AONや全盛期の石川選手のように、ゴルフ界という枠を飛び越えて社会全体の注目を集めるほどの絶対的なスターが見当たりません。
これは、単に実力のある選手がいないということではありません。
才能に溢れた魅力的な若手選手は数多く存在します。
しかし、彼らをファンが憧れる真のスターに押し上げるための、協会やメディアによる戦略的な「演出」や「プロデュース」が決定的に不足しているという厳しい指摘があります。
選手の魅力を最大限に引き出し、物語を紡いでファンに届ける努力が足りていないのです。
また、プレーそのもの以外のエンターテイメント性という観点でも、改善の余地が多く残されています。
近年ではDJブースが設置される大会や、人気プロゴルファーの堀川未来夢選手のようにYouTubeで積極的に情報発信する選手も現れ、変化の兆しは見られます。

それでも、試合観戦以外に家族連れでも楽しめるグルメフェスや、プロの技術を間近で見られるレッスン会、子供向けの体験型イベントといった複合的な施策は、まだ十分とは言えません。
一人の英雄のカリスマ性に頼る時代が終わり、アスリートとファンの関係がより身近になった現代において、選手の卓越したプレーの魅力と、観客を楽しませるエンターテイメント性の両輪でファンを惹きつける総合的な工夫が、これまで以上に重要になっています。
改善策から探る男子ゴルフ不人気の理由
- 女子ゴルフ人気理由から学ぶべきこと
- ファンサービスとスポンサーへの姿勢
- 海外ツアーへの選手流出と国内の空洞化
- 録画放送中心のメディア戦略の問題点
女子ゴルフ人気理由から学ぶべきこと

男子ツアーが直面する課題の解決策を探る上で、大きなヒントとなるのが、高い人気を維持している女子ツアーの成功要因です。
なぜ女子ゴルフはこれほどまでに多くのファンを惹きつけ、スポンサーから支持されるのでしょうか。
その理由は複合的ですが、主に「スポンサーを満足させるホスピタリティ」「将来を見据えた徹底的な新人教育」「実力が拮抗したツアーの競争的な面白さ」という3つの好循環が挙げられます。
第一に、スポンサー満足度の高さです。
トーナメント開催に不可欠なプロアマ戦において、女子プロのホスピタリティやコミュニケーション能力は高く評価されています。
愛想の良い会話や細やかな気配りは、接待の場としてプロアマ戦を重要視するスポンサー企業の重役たちに大変好評です。
この満足度の高さが、「また来年も女子ツアーのスポンサーをしたい」という企業の継続的な支援意欲に繋がり、安定したツアー運営の基盤を築いています。
第二に、統括団体である日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)による、徹底した新人教育です。
プロテストに合格したばかりの新人選手たちは、ゴルフの技術やルールだけでなく、社会人としての礼儀作法や美しい言葉遣い、メディア対応、さらにはスポンサーとの接し方まで、「魅力的なプロゴルファー」になるための専門的なセミナーを数日間にわたって受講します。
こうした体系的な教育が、プロとしての高い自覚を促し、ファンや関係者から広く好感を持たれる選手を育てているのです。
女子ツアーが人気を維持する理由
- プロアマ戦での高い評判: スポンサーやその大切な顧客に対し、おもてなしの心を持って接することができる選手が多い。
- 徹底された新人教育: 技術だけでなく、プロアスリートとして、また一社会人としてのマナーや立ち居振る舞いを学ぶ機会が制度として確立されている。
- ツアー全体の競争激化: 若手の台頭が著しく、実力が拮抗しているため、毎試合誰が勝つか分からない筋書きのないドラマが生まれる。
そして第三に、ツアーそのものが持つ競争的な面白さです。
黄金世代、プラチナ世代といった才能豊かな若手が次から次へと登場し、トップ選手の顔ぶれが常に入れ替わるため、実力が拮抗しています。
その結果、毎試合で熾烈な優勝争いが繰り広げられます。最終戦までもつれる賞金女王争いなど、シーズンを通したストーリー性のある展開がファンの心を掴んで離しません。
これらの成功事例を男子ツアーが真摯に分析し、どう取り入れていくかが、今後の再建の大きな鍵となるでしょう。
ファンサービスとスポンサーへの姿勢

男子ツアーがかつての人気を取り戻すために、技術論や戦略論以前に、最も基本的かつ最重要の課題となるのが、ファンとスポンサーに対する姿勢の根本的な見直しです。
プロスポーツはあくまで「興行」であり、貴重な時間とお金を払って観に来てくれるファンと、多額の資金を提供して大会を支えてくれるスポンサーがいて初めて成り立つという、ビジネスとしての原点に今一度立ち返る必要があります。
しかしながら、一部の男子プロ選手には、サインを求めるファンに対して無愛想な態度を取ったり、大会関係者やスポンサーへの挨拶を怠ったりする姿が見られるという、ゴルフ関係者からの厳しい指摘が後を絶ちません。
たった一人の選手の配慮に欠ける態度が、「これだから男子ツアーの選手は」という、ツアー全体のネガティブな評判につながってしまう危険性を、全ての選手が深く認識するべきです。
もちろん、大多数の選手はファンやスポンサーに対して真摯に向き合っています。
例えば、ツアーの顔でもある石川遼選手は選手会長としてファンサービスの向上を訴え続け、ベテランの宮本勝昌選手は、自主的にスタート前のギャラリープラザでじゃんけん大会を開き、サイングッズをファンにプレゼントする活動を長年続けています。
このような地道なファンサービスこそが、会場に足を運ぶ価値を何倍にも高めるのです。
感謝の気持ちを具体的な「行動」で示す重要性
「ナイスショット!」という温かい声援に、笑顔で「ありがとうございます」と返す。
プロアマ戦で同伴のアマチュアゴルファーに丁寧にラインを読んでアドバイスをする。
スタートホールで大会役員の方々に一言「お世話になります」と挨拶する。
これらは決して媚びを売る行為ではなく、プロアスリートとして、また一人の社会人としての基本的な姿勢です。
こうした当たり前の小さな行動の積み重ねが、ツアー全体の信頼を築き、応援したいという気持ちを育むのです。
他の人気プロスポーツでは、選手が試合後に観客席にサインボールを投げ込むなど、ファンとの距離を縮めるための様々な工夫が日常的に行われています。
男子ツアーも、他の競技の良い事例を積極的に「真似る」ことから始め、ファンとスポンサーあってのツアーであるという感謝の気持ちを、具体的な行動で示していくことが不可欠です。
海外ツアーへの選手流出と国内の空洞化

国内男子ツアーが抱える構造的な問題の中でも、特に深刻なのがトップクラスの選手の「海外流出」です。
世界最高峰の舞台で戦うことを目指す向上心は、アスリートとして賞賛されるべきものですが、その結果として国内ツアーの魅力が相対的に低下し、スター選手不在による「空洞化」が進んでいるという厳しい側面も否定できません。
前述の通り、残念ながら国内ツアーは世界ランキングの付与ポイントが低く設定されています。
そのため、世界のトップを目指す有望な若手選手ほど、より多くのポイントが付与されるDPワールドツアー(欧州ツアー)やPGAツアー(米国ツアー)に、キャリアの早い段階で挑戦の場を移すのが現在の潮流です。
昨季の国内賞金王である中島啓太選手をはじめ、金谷拓実選手、星野陸也選手といった、本来であればこれからの国内ツアーを牽引すべきスター選手たちが、シーズンを通してそのほとんどを海外で戦うケースが増えています。
これにより、日本のゴルフファンは、国内で開催されるトーナメントでトップ選手のハイレベルなプレーを見る機会が激減してしまいます。「自分が応援したいスター選手が、日本の試合にはほとんど出ていない」となれば、ファンの関心が薄れてしまうのは極めて自然な流れです。
星野陸也選手の活躍はこちら

JGTO新会長が掲げるグローバル戦略
この深刻な問題に対し、2024年3月に日本ゴルフツアー機構(JGTO)の新会長に就任した諸星裕氏は、国内だけで完結するのではなく、他国のツアーとの連携を積極的に強化していく構想を掲げています。
特に、成長著しいアジア・オセアニア地域のツアーと連携し、巨大なマーケットを背景に、米国、欧州に次ぐ世界の「第三極」を創設するという壮大なプランに言及しており、その今後の動向が大きく注目されます。
現状のように、国内ツアーが世界への「ステップアップの場」としてしか機能しなくなると、最高レベルの戦いを求める熱心なファンは離れていってしまいます。
海外ツアーとの連携強化や、賞金総額の高い共催試合を日本で増やすなど、国内にいながらにして世界レベルの興奮が味わえるような、新たな価値を創造していくことが急務となっています。
録画放送中心のメディア戦略の問題点

ファンがゴルフツアーを楽しみ、その熱狂を社会全体に広げていく上で、テレビ放送をはじめとするメディアの役割は極めて重要です。
しかし、現在の男子ツアーのメディア戦略には、時代に対応できていない大きな課題が存在します。
それは、多くの大会が地上波で「録画放送」を中心に編成されているという、ファン不在とも言える点です。
インターネットやSNSを通じて、あらゆる情報がリアルタイムで瞬時に駆け巡る現代において、すでに結果が分かっている試合を数時間後、あるいは翌日に見るという視聴スタイルは、時代遅れと言わざるを得ません。
優勝争いの息詰まるような緊迫感や、勝負を分ける一打の行方に一喜一憂するライブ観戦の醍醐味が、録画放送では完全に失われてしまっています。
もちろん、多額の放映権料やテレビ局全体の編成の都合など、生中継を実現するには様々な障壁があることは理解できます。
しかし、ファン目線で考えた場合、生中継が少ないという事実は、他の多くのスポーツと比べて魅力が劣ると感じさせる致命的な要因です。
このことが、テレビ視聴率の長期的な低迷、ひいては人気の低下に直結していることは間違いありません。
一方で、旧来のメディア戦略が停滞する中、新たな可能性も見え始めています。その代表例が、選手自身によるソーシャルメディアなどを活用した積極的な情報発信です。
特に、ツアー屈指の理論派として知られる堀川未来夢選手が運営するYouTubeチャンネルは、プロならではの高度な技術解説や、普段は見られないツアーの裏側などを発信し、多くのゴルファーから絶大な支持を集めています。
これは、テレビという既存のマス・メディアだけに頼るのではなく、SNSや動画配信プラットフォームを戦略的に活用し、選手が直接ファンと繋がることが、新たなファン層を開拓する強力な武器になるという可能性を示しています。
今後は、地上波放送の充実に向けた努力を続けると同時に、ABEMAのようなインターネットテレビでの全日程ライブ配信を拡充するなど、現代の多様な視聴スタイルに合わせたメディア戦略を再構築することが、ファンを呼び戻すために不可欠な要素となるでしょう。
堀川未来夢選手の活躍はこちら

総括:男子ゴルフ不人気の理由と今後の課題
この記事では、国内男子ゴルフツアーがなぜ人気低迷に陥っているのか、その複合的な理由と、復活に向けた数多くの課題について多角的に解説しました。最後に、本記事で取り上げた要点をリスト形式で改めて整理します。
- 男子ツアーは女子ツアーに比べ試合数が大幅に少ない
- テレビ視聴率や会場のギャラリー数も長期的に低迷している
- 次代を担うスター選手の不在が人気低迷の大きな要因
- AON時代のような社会現象を巻き起こすカリスマがいない
- ファンサービスやスポンサーへの感謝の姿勢に課題があるとの指摘
- 一部選手の無愛想な態度がツアー全体の印象を悪化させている
- 有望な若手選手がより高いレベルを求め海外ツアーに流出している
- 結果として国内ツアーの空洞化とレベル低下が懸念される
- 若者のゴルフ離れやゴルフ人口の高齢化(2025年問題)も深刻な課題
- 高額な費用やプレー時間が若者の新規参入を妨げる障壁となっている
- テレビ放送が録画中心でリアルタイム性に欠け、ファンが離れている
- JGTOの組織運営やグローバル化への対応遅れにも改善の余地
- 女子ツアーの成功事例に学ぶべき点は非常に多い
- 新人教育の徹底やプロアマ対応は重要な比較ポイント
- JGTO新体制によるリーダーシップと大胆なツアー改革が急務である
↓関連記事↓


