最近、熊の出没に関するニュースが本当に多くなっています。
以前は他人事のように感じていましたが、ついにプロゴルフのトーナメントが中止になる事態まで発生し、「ゴルフ場」も決して安全な場所ではないと痛感しています。
北海道のゴルフ場の熊対策はもちろんですが、最近では関東の栃木・群馬・埼玉、あるいは関西や中部の岐阜・静岡・新潟など、全国のゴルフ場で出没情報が報告されています。
私もゴルフを愛する一人として、「もしプレー中に遭遇したらどうしよう?」「ゴルフ場での熊対策として、プレーヤーは何を準備すればいいのか?」と、真剣に不安を感じるようになりました。
この記事では、私なりに調査したゴルフ場での熊対策や、万が一の時の対処法をまとめています。
しかし、先に私の結論から申し上げますと、熊は本当に恐ろしい相手です。
対策を過信せず、ご自身の身の安全を第一に考えるなら、心配な時期や地域のゴルフ場へは行かないのが最も安全だと考えています。
それを前提として、読み進めていただけると幸いです。
記事のポイント
- ゴルフ場で熊の出没が深刻化している理由
- プレーヤーが準備すべき熊よけグッズと注意点
- 万が一、熊に遭遇してしまった時のNG行動
- ゴルフ場側が実施している電気柵などの安全対策
深刻化するゴルフ場の熊 対策

まずは、現在のゴルフ場で何が起きているのか、その現状をしっかり把握しておきましょう。
私が認識していたよりも、深刻な事態になっているようです。
熊の出没でツアー中止の事例
女子ゴルフのコースに「熊出没」情報 明治安田レディスの第1R中止 https://t.co/uZP66QCz0l
— 朝日新聞(asahi shimbun) (@asahi) July 16, 2025
17日から宮城県富谷市で始まる予定だったゴルフの女子ツアー「明治安田レディスゴルフトーナメント」のコース内に熊が出没したという目撃情報が16日にあり、17日の第1ラウンドが中止になった。
ゴルフ場での熊の目撃情報は、以前は稀な出来事として扱われがちでしたが、最近はその深刻さが全く異なっています。
2025年5月には、石川県の「ツインフィールズレディース」が最終日に熊の目撃情報で即時中止となりました。
また、7月には宮城県の「明治安田レディス」も、熊の出没で初日が中止となり、競技が短縮される事態となりました。
プロのトーナメントが中止になるというのは、まさに異常事態と言えるでしょう。
これは「稀に起こる自然との遭遇」というレベルではなく、ゴルフ場の運営そのものを脅かす「重大なリスク」に質的に変化したのだと感じます。
ツインフィールズの事例では、盾を構えた警察官が出動する様子も報道されており、これが単なる鳥獣害対策ではなく、地域社会全体の「公衆安全」の問題として扱われていることがわかります。
熊が活発な時期と時間帯

では、いつが一番危険なのでしょうか。その答えは、ゴルファーにとって非常に悩ましいものです。
熊が一番活発になるのは、冬眠(ツキノワグマは例年11月頃から)に備えて大量に食物を摂取する「秋(10月〜11月)」とされています。エサを求めて行動範囲が格段に広がる時期です。
そして、時間帯は人間との遭遇を避けるため「早朝」と「夕方(薄暮時)」に集中する傾向があります。
これは、まさにゴルフのベストシーズンであり、スタート時間や最終組のプレー時間と完全に一致してしまっています。
私たちが最もゴルフを楽しみたい時間帯と、熊が最も活発な時間帯が重なっているのは、構造的に遭遇リスクが非常に高い、皮肉な現実です。
北海道のゴルフ場での熊出没
北海道のゴルフ場における熊の出没は、本州とは危険性のレベルが異なると言えるかもしれません。
ご存知の通り、北海道に生息するのは「ヒグマ」です。
本州のツキノワグマと比べて、体格も大きく、より危険性が高いと言われています。苫小牧市や登別市など、多くのゴルフ場が広大な森林(ヒグマの生息地)と隣接しています。
ゴルフ場自体は、芝が刈り込まれており、熊の主食となる木の実も少ないため、本来は熊が好む「エサ場」ではありません。
しかし、生息地間を移動するための「通過点」としてコースを横切ったり、森林の端(林縁部)から迷い込んだりするリスクが常にあるのです。
関東(栃木・群馬)の熊出没
「熊は北海道や東北だろう」というイメージでしたが、現在は関東でも決して他人事ではありません。
特に栃木県や群馬県、埼玉県の秩父地方など、山林に近いゴルフコースでは、熊の目撃情報が報告されています。
事実、2025年10月には埼玉県ときがわ町のゴルフ練習場付近で目撃情報が報道されていますし、群馬県桐生市のゴルフ場を含むリゾート施設(赤城ロマンド)でも、敷地内での目撃情報が公式に発表され、注意喚起がなされています。
(出典:【ご注意ください!!】クマが出没しています!!/前橋市 )
私も関東近郊のコースに行くことが多いので、「自分の行くコースは大丈夫か?」と、予約する前に自治体が発表する出没情報をチェックするようになりました。
熊の生息地と人間の活動領域が、文字通りフェンス一枚で接しているという認識が重要です。
関西・中部(岐阜・静岡)の熊出没
この傾向は関西や中部地方も同じです。「関東だから」「中部だから」という地域性は、もはや関係なくなってきていると感じます。
例えば、静岡県では2024年度の熊の目撃件数が、前年の同時期と比べて約3倍のペースで急増したと報告されています。
特に富士山の麓に位置し、多くのゴルフ場が点在する富士宮市や小山町といった地域が、目撃情報の多いエリアとして挙げられています。
また、長野県では2025年に入り、すでに複数回にわたって県内の一部地域に「ツキノワグマ出没注意報」が発出される事態となっています。
特に、日本を代表するリゾート地であり、名門ゴルフコースが集中する軽井沢町でも、2025年5月や6月に山菜採り中や散歩中の方が熊に襲われる人身被害が実際に発生しています。
(出典:長野県「ツキノワグマ対策について」)
岐阜県においても、スキーリゾートやゴルフ場が集まる郡上市(高鷲町)などで、2025年11月に入っても熊の目撃情報が相次いで報告されています。
これらの事実は、もはや「特定の地域の問題」ではなく、「山林に隣接するゴルフ場」であれば「全国どこでも起こりうる」状況に変わりつつあると、改めて実感させられます。
遭遇時に絶対NGな行動

では、もし万が一、プレー中に熊と遭遇してしまった場合、どうすればよいでしょうか。
私たちがパニックになって、本能的にとってしまう行動が、実は一番危険であると言われています。これだけは絶対に覚えておく必要があります。
【危険】絶対にやってはいけないNG行動
- 大声を出す、悲鳴を上げる 驚いて叫びたくなる気持ちは理解できますが、人間の甲高い声は熊を極度に興奮させ、パニックに陥らせると言われています。熊も人間を恐れており、パニックになった熊は「防御」のために攻撃してくる可能性が非常に高まります。
- 背中を向けて走って逃げる これも本能的にやってしまいそうですが、絶対に避けなければなりません。熊には「逃げるもの(背中を見せるもの)を追いかける」という習性(捕食本能)があると言われています。人間の走る速度では到底逃げ切れず、この行動が熊の攻撃本能を一番刺激してしまうそうです。
また、スマートフォンなどで撮影しようと近づく行為も、熊を刺激する非常に危険な行為ですので、絶対にやめてください。
命を守るゴルフ場 熊 対策

深刻な現状が続きましたが、では具体的に私たちゴルファーが「命を守る」ために何ができるのか、どんな準備と知識が必要なのかをまとめていきます。
熊よけ鈴とスプレーの効果

熊対策グッズとして定番の「熊よけ鈴」と「熊撃退スプレー」。
これらについて、私は当初「万が一のために準備すべき」と考えていました。
しかし、最近の深刻な状況と新しい情報を踏まえ、その考えを改める必要があると感じています。
熊よけ鈴について
熊鈴は、古くから「音で人間の存在を知らせ、熊に避けてもらう」ための予防具として使われてきました。
しかし、最近のテレビ報道や専門家の指摘によると、非常に恐ろしい可能性が浮上しています。
それは、登山者などが持っていた食べ物の味を覚えた「人馴れ」した熊が、「鈴の音 = 人間がいる = 食べ物がある」と学習し、音を聞きつけて逆に近寄ってくる危険性がある、というものです。
熊が音をどう認識するかは、地域の熊の個体差や「人馴れ」の度合いによります。
もはや「お守り」どころか、場合によっては逆効果になるリスクも考慮しなくてはならず、これを過信して危険な場所に赴くのは、極めて危険な判断かもしれません。
熊撃退スプレーについて
一方で、近距離で遭遇・突進されてしまった場合に、最強の護身用品となるのが「熊撃退スプレー」であることに変わりはありません。
唐辛子成分(カプサイシン)で熊の目や鼻を狙い、怯んだ隙に逃げるための、いわば「最終兵器」です。
しかし、こちらも深刻な問題があります。
ご存知の通り、全国的な出没情報の急増に伴い、現在、この熊撃退スプレーがオンラインストア(楽天、Amazon含む)で深刻な欠品・品薄状態となっています。
私たちが直面している現実
この状況を整理すると、以下のようになります。
- 最強の護身用品である「スプレー」は、欲しくても手に入らない。
- 伝統的な予防策である「鈴」は、逆効果になる危険性が指摘され始めた。
これは、私たちゴルファーが「丸腰」の状態で熊の生息地に入っていくことに他なりません。
この事実こそが、この記事の結論である「最善の対策は、危険な時期や場所には近寄らないこと」という判断を、何よりも強く裏付けていると私は考えます。
熊スプレー携帯の注意点

前述の「熊撃退スプレー」について補足となりますが、持っていれば安心かというと、その携帯には法的な注意点があります。
熊撃退スプレーは「護身用品」に分類されますが、「正当な理由」なく持ち歩いていると、軽犯罪法に抵触する可能性があると言われています。
熊撃退スプレーの携帯に関する注意
- 法的な解釈(軽犯罪法) 「ゴルフ場(山間部)へ行く」というのが「正当な理由」と見なされるか、私も詳しく調べましたが、法的な解釈としてはグレーゾーンであると感じました。登山や渓流釣りなら「登山道具一式」と一緒ならOK、という解釈が多いようですが、ゴルフバッグがこれに準ずると断言はできません。
- 航空機への搭載禁止 スプレーは高圧ガスのため、飛行機(機内持ち込み・預け荷物ともに)は絶対にNGです。ゴルフ遠征の場合は、事前に陸送便(トラック便など)で現地(ホテルやゴルフ場)に送る必要があります。
この記事に記載しているのは、あくまで私が調査した一般的な情報です。
法律に関する最終的な判断や、ご自身の携帯が「正当な理由」にあたるかどうか不安な場合は、必ずお近くの警察署や専門家にご相談ください。
襲われた時の最終防御姿勢

これは考えたくないシナリオですが、もしスプレーも間に合わず、熊が襲い掛かってきた場合の「最後の防御姿勢」について解説します。
【最終手段】致命傷を避ける防御姿勢
熊による死亡事故の多くは、首の太い血管の損傷による失血死など、急所をやられることと言われています。
万が一の際は、「両手で首の後ろをしっかりガード」し、即座に「うつ伏せ」になること。
これが、内臓と首という最も弱い部分を守るための、専門家が推奨する唯一の受動的防御体勢とされています。
「ゴルフクラブで反撃」という考えは、熊をさらに興奮させ、より深刻な攻撃を誘発する可能性が極めて高いため、絶対に避けるべき、とのことです。
怖いですが、覚えておく必要があります。
(出典:クマ類出没対応マニュアル -改定版- || 野生鳥獣の保護及び管理[環境省]/chpt3.pdf )
ゴルフ場の電気柵は安全か

私たちプレーヤーが対策する一方で、ゴルフ場側も「電気柵」などで対策を進めているところがありますよね。福島県のゴルフ場などで導入事例があるようです。
ただ、この電気柵も「あれば絶対安全」というわけではないようです。
電気柵は、物理的な壁ではなく、熊に「この柵に触れると痛い」と学習させるための「心理柵」です。そのため、最初の接触で十分な衝撃(電圧)を与えることが極めて重要とされています。
電気柵が機能しない主な原因
専門家によれば、電気柵の失敗はほぼ「管理の失敗」だそうです。
電圧は常に「4000V以上」を維持する必要があり、ワイヤーに草やツルが接触すると漏電して電圧が著しく低下します。
電圧が下がった柵は熊が「怖くない」と学習してしまい、簡単に突破されるとのことです。
結局、設置されているかどうかより、「その柵が日々、適切に管理(下草の刈り払いなど)されているか」次第、ということになります。
最善のゴルフ場 熊 対策とは
ここまで、ゴルフ場での熊対策について色々とまとめてまいりました。
スプレー、ゴルフ場側の電気柵…色々な対策がありますが、どれも「絶対」ではありません。
対策はあくまで、熊との遭遇確率を「下げる」ためのものです。
熊は本当に恐ろしく、予測不可能な野生動物です。
対策の基本については、公的なガイドラインを一度確認しておくことも重要です。(出典:環境省『クマ類出没対応マニュアル』)
私が考える最善のゴルフ場での熊への対策は、いろいろなグッズを揃えることよりも、「熊の出没情報が出ている時期・地域(ゴルフ場)には、そもそも近寄らないこと」、そして「もし現地で不安を感じたら、プレーをキャンセルする勇気を持つこと」──これに尽きると考えています。
皆さんも、ご自身の安全を最優先に、ゴルフを楽しんでください。
